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贈呈式・研究報告会
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検証 "東日本大震災"命を救う情報をどう伝えたか 〜地震発生から1時間〜
日本災害情報学会 デジタル放送研究会 
代表 藤吉洋一郎
 地震発生のおよそ30分後には三陸の沿岸部に10m前後に達した大津波が押し寄せ、その後の30分には大津波の到達範囲は宮城県を経て、福島県北部にまで拡大していた。本研究会では発生から1時間という震災の初動期に「命を救う情報はどうなっていたのか」に焦点を当て、主として放送がどのように防災・減災に貢献することができたかを明らかにし、今後に役立つ方策をさぐろうとしている。
 17年前の阪神大震災では、地震発生から最初の1時間というもの、メディアは神戸など震源近くの被災状況をなかなか把握することができずに、周辺の比較的軽微な被害情報ばかりを伝えることになって、大きな反省を強いられた。
 今回の東日本大震災では、各テレビ局が配置した海岸のロボットカメラやヘリコプターによる上空からの生中継映像によって、大津波による被災状況は非常に早い段階から、全国に逐一放送されていた。この点では、阪神大震災の経験は生かされ、目覚ましいまでの進歩をとげたといえる。
 しかし、テレビやラジオが伝えた情報が、2万人近くの犠牲者の命を救うことにはならなかったのはどうしてだろうか?情報の伝え方に何か問題はなかっただろうか?停電した被災地域でも受信できたメディアという意味で、NHKラジオの発生から1時間の放送記録を見直してみた。
 すると気象庁が午後3時15分ごろに発表した最初の大津波警報の追加情報では、大津波警報の対象範囲を拡大したほかに、予想される津波の高さを宮城県10m以上、岩手県と福島県6mと、それぞれ最初の警報発表の時と比べて2倍にかさ上げしていたのだが、このことが一度もアナウンスされずに終わっていたのである。津波の規模が尋常でないことを人々に知らせるには、大切な情報であったはずなのに、どうしてこのようなことが起きてしまったのだろうか?
 午後3時半まではNHKのラジオにはテレビの音声が流れていたのだが、気象庁が1回目の大津波警報の追加情報を発表した時、すでにNHKのテレビ画面では、岩手県釜石市の港に大津波が到達していることが、ロボットカメラの映像で明らかになっていたうえ、東京のスタジオも折から激しい地震の揺れに襲われていたのである。いずれも急いで伝えたい情報であり、結果として追加情報の中の津波の予想される高さの見直しについては、テレビ画面に表示されてこそいたものの、アナウンスされることは無しに終わったのである。大津波の尋常ではないことを伝えようとした気象庁の意図は、混乱の中で被災地にはうまく届かなかったのである。