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放送文化基金賞の応募方法がWeb申請に変わりました。 |
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【本賞】NHKスペシャル 夫婦で挑んだ白夜の大岩壁 |
「山さえあれば何もいらない」。物欲や功名心とは無縁の質素な生活を送りながら、二人は自分たちが納得するクライミングを追求してきた。手足の指を失っても、その情熱は消える事なく、今回、二人は未踏の大岩壁に「美しい登攀ライン」を描くという夢を持って北極圏へ向かった。
なぜ、そうまでして登るのか?その想いを描こうと、我々は小型カメラ、無線マイクを駆使し、岩壁での過酷な密着取材に挑んだ。
登頂までの3週間。ひたむきに登る二人の姿は、単なる挑戦のドラマの枠を越えた、夫婦の愛情物語となった。それが幅広い世代に感銘を与えたのではないだろうか。
登頂後、少年のような笑顔で「うれしいです」と語った泰史さん。
二人はこれからも登り続ける。 |
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【優秀賞】ネットカフェ難民 〜見えないホームレス急増の背景〜 |
ネットカフェの薄暗い空間で体を屈めて眠る人々の存在を知り、愕然としました。長期滞在での強烈な体臭、ストレスによる罵声の応酬、無気力な表情。戦地の難民と姿が重なりました。全財産をタンス替わりの格安ロッカーに預け、路上生活とは紙一重の“見えないホームレス”。私は「ネットカフェ難民」と名付け、その背景を取材しました。彼らの働き方は日雇い派遣。危険な違法業務や不明朗なピンハネが日常茶飯事の不安定で細切れな労働でした。
「一度住所を失い、この生活に落ちるともう這い上がれない」。同じ感想を何度も聞きました。番組がきっかけで行政がネットカフェ難民の相談窓口を設立したものの貧困を生む根本は解決されていません。受賞を励みに今後もこの問題を追跡していきたいと思います。 |
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【番組賞】NHKスペシャル あなたの笑顔を覚えていたい |
受賞の言葉にかえて、紀美さんの近況をお伝えします。放送が終わって半年以上たちますが、紀美さんは今でも番組のビデオを繰り返し見ているそうです。記憶障害がある紀美さんにとって、この番組は過去を振り返る手がかりとなっているのかもしれません。息子の由聖くんはもう2歳。いたずらっこになり、紀美さんの記憶がわりの「育児メモ」には落書きがいっぱい。そんなメモを、紀美さんは一枚も捨てずに大切にとっています。
記憶が残らないからこそ、一瞬一瞬を大切に生きていこうとする紀美さん。そのひたむきな姿に、私たちクルーは勇気づけられ一年間、取材を続けてきました。長い時間、私たちを家族同様に受け入れてくれた岡本紀美さんとご家族のみなさんに、心から感謝の気持ちを伝えたいと思います。 |
NHK名古屋放送局 福田 和代
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【番組賞】母は闘う 〜薬害肝炎訴訟原告 山口美智子の20年〜 |
山口美智子さんは常に「社会の中での自分の役割」を意識した方です。社会に貢献できる仕事だと誇りを持っていた小学校の教師の職を、C 型肝炎の治療のために辞めざるを得なかった山口さんは、薬害肝炎訴訟の原告となって、「国に責任を認めさせて、薬害をこれで終りにすること」に自分の役割を見出しました。普段の山口さんは優しい「お母さん」です。普通の母親が、信念を持ってそれを貫き、自分への賠償だけでなく肝炎患者全体の救済を求めたからこそ、世論の後押しを得て「薬害肝炎救済法成立」という劇的な結果を得られたのだと思います。5年前、初めてお会いした時、山口さんは実名公表を決めてくださいました。本音を語り、ありのままを見せてくださった山口さんに、改めてお礼を申し上げたいと思います。 |
アール・ケー・ビー毎日放送 大村 由紀子
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【番組賞】映像’07 夫はなぜ死んだのか 〜過労死認定の厚い壁〜 |
「ドキュメンタリーは、主人公で決まる」
これは、番組プロデューサーが、常に口にする言葉です。
今回の番組は、原告が裁判に勝利する場面で締めくくることが出来ましたが、当然ながら、原告敗訴の可能性もありました。このリスクを覚悟しながらも、制作を決意したのは、原告が、内野さんだったからです。内野さんの裁判は、地元では当初、協力者も無く、唯一の理解者だった実母の突然の死、裁判に反対する実父との絶縁など、常に孤独との闘いでした。それでも、裁判を闘う内野さんの姿に私は、心を打たれました。
ドキュメンタリー番組の制作は、多くの人たちとの出会い、多くのことを学ぶ場所だと考えます。今回も貴重な経験に恵まれ、結果として、このような素晴らしい賞をいただけたことに深く感謝いたします。 |
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