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第40回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクール
【企画部門】最優秀賞/放送文化基金賞 
『通学路は大自然』(スリランカ)に決定
 NHKが主催する第40回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクールが開催され、当基金が賞金のスポンサーとして参加する企画部門には、16の国・地域の23機関から、32企画の応募があった。この部門は、予算や機材などの条件が十分でないために番組制作が困難な国・地域の制作機関の、優秀なテレビ番組企画を表彰し、番組として完成させることを目的としている。
 最終選考に残った5つの企画から、プレゼンテーション審査を経て最優秀企画に選ばれたのは、スリランカ放送協会(スリランカ)のアトラ・ディサナヤカさんの企画 『通学路は大自然』。10月24日に開催された授賞式で、塩野宏理事長からディサナヤカさんに、「放送文化基金賞」として賞牌、賞金8000ドルが贈られた。
 『通学路は大自然』は、スリランカのジャングルの村で暮らす子どもたちが、大自然の中を数キロ歩いて学校に通う様子を追いながら、彼らが勇気と希望を胸に、どのようにして自然との向き合い方を学んでいくかを描くドキュメンタリー番組の企画。

 
授賞式の後、受賞したアトラ・ディサナヤカさんにお話を伺いました。

― なぜスリランカのジャングルの子どもたちの通学路をドキュメンタリーにしようと考えたのですか。

アトラ まず、私自身がジャングルの村の出身で、自然の中で育ち、自然と向き合うことの大変さや喜びをよく知っているからです。もう1つの理由は、テレビプロデューサーとして全国を訪ねる機会があり、ジャングルの村の子供たちが、困難な問題や危険に直面しながらも、自然から様々なことを学んでいる様子を目にしたからです。そこで、この話をすばらしいテレビドキュメンタリーにしようと考え、日本賞に応募しました。

― あなたの企画では、子供たちの困難な状況だけでなく、とても前向きな面も強調されているようですね。

アトラ はい。子供たちは、困難な状況にあっても学びたいという気持ちを忘れず、常に考えています。川に橋を架けてあげようかと言ったとしても、自分たちで物を寄せ集めてなんとかしようとします。学びたいという子供の気持ちは、万国共通だと思います。子供たちは自然が大好きで、自然から学ぼうとするのです。
 いわば、形式にとらわれない教育ですね。学校は存在しますが、周りの自然環境を考えると十分な教育施設を整えることはできません。しかし、村には自然の学校が存在します。子供たちは、自然との触れ合いにより、実生活で役立つことを、意識することなく学んでいるのです。これも作品のコンセプトの1つです。

― 村の子供たちが学んでいることで、東京やコロンボなどの都会の子供たちには考えられないような例を1つ挙げてください。


アトラ 「鳥の生態」は1つの例です。森の中には、鳥の巣があります。子供たちは、その中に卵を見つけ、殻が破られて雛が生まれ、飛び立とうとする様子を目の当たりにします。鳥の生態を自然の中で学んでいるのです。

― お話のジャングルは、スリランカのどのあたりにありますか?

アトラ ジャングルは、国土の約25%を占めており、南東部一帯を含め国内に5地域ほどあります。私は、全国のジャングルの村を取材しています。

― 通学路が毎日同じだと飽きてしまうのではありませんか。

アトラ モンスーン・シーズンであれば、ジャングルのあちこちに水流が発生します。乾季には、さまざまな果物が実をつけます。その季節の気候によってジャングルの環境は全く違うので、飽きることはありません。
 私も子供の頃、授業中、教科書を机の中に隠してジャングルに遊びに行き、校長室に呼びつけられて大目玉をくらったことがありました(笑)。学校の周りはすべてジャングルだったので、本当に自由で楽しかったです。

― 放送予定は、来年9月ですね。制作や放送の方法、回数等について教えてください。

アトラ 日本賞の審査規定では30分以内の作品にすることが求められていますが、一部の審査員の方から、1時間の作品にするべきだとの声をいただいたので、52分〜1時間バージョンもあわせて制作するつもりです。気候変化のパターンをお見せしたいので、直ちに制作にとりかかるつもりです。乾季と雨季では、まったく違いますからね。東部は11月にモンスーン・シーズンに入るので、すぐに制作に取りかからなければなりません。モンスーン季から徐々に水がなくなって乾季になるまで、1年間を通じて制作します。
 番組は、複数回放送する他、DVDを作成して教育省に送り、各学校に配布してもらいます。また、オランダやベルリンなどで開催されるコンテストへの参加も考えています。

― 作品の完成を楽しみにしています。ありがとうございました。

●プロフィール
 Athula Disanayaka(アトラ・ディサナヤカ)
TVプロデューサー(スリランカ放送協会)
コロンボ大学で、ジャーナリズムと写真撮影を学ぶ。地方新聞のフリーランス・ジャーナリストを経て、1997年にスリランカ放送協会のテレビ事業部門(SLRC)に入局し、現在に至る。これまでに制作した番組に対し、国内で最優秀教育番組賞を含め4回受賞。奨学金によりオランダとドイツに留学し、教育番組制作を学んだ経験がある。