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第38回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクール
企画部門最優秀企画『テレビはダンボール箱』に決定
 NHKが主催する第38回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクールが開催され、当基金が賞金のスポンサーとして参加する企画部門には、17か国26機関 から35企画の応募があった。この部門は、予算や機材などの条件が十分でないために番組制作が困難な国・地域の制作機関の、優秀なテレビ番組企画を表彰し、番組として完成させることを目的としている。
 最終選考に残った5つの企画(別表)から、プレゼンテーション審査を経て最優秀企画に選ばれたのは、マラウイ教育研究所のカレブ・ムチュングさんの企画『テレビはダンボール箱』。10月27日に開催された授賞式で、塩野宏理事長からムチュングさんに、「放送文化基金賞」として賞牌、賞金8000ドルが贈られた。
 『テレビはダンボール箱』は、アフリカでも特に貧しい国のひとつであるマラウイの、厳しい環境にある教育現場において、身近にある物を利用し、生徒に興味を抱かせる画期的な教育法を見出すことを教師たちに促す、ドキュメンタリー番組の企画。

マラウイ共和国(首都リロングウェ)
アフリカ南部に位置する、ザンビア、タンザニア、モザンビークに挟まれた内陸国。面積は11.8万平方キロメートル(北海道と九州をあわせた大きさ)。人口は1,526万人(2009:世銀)。公用語はチェワ語と英語。人口の75%がキリスト教信者。(外務省ホームページより)
 
授賞式の後に、企画者であるムチュングさんにお話を伺った。

― ムチュングさんはケニアのご出身ということですが、どのような経緯で、マラウイ教育研究所
   (MIE:Malawi Institute of Education)で働くことになったのですか。


ムチュング 私の所属する組織は、ボランティア・サービス・オーバーシーズ(VSO)というイギリスの団体で、ボランティアを通じて開発途上国の貧困の問題に対峙しています。もともとイギリス人だけの組織でしたが、現在では、フィリピン、カナダ、インド、ドイツなど、世界22か国の人材が世界各地で働いています。VSOが採用するのは、学位を取得したプロ(専門家)に限っているため、アフリカ地域では、人材の豊かなケニアとウガンダからのみ職員が採用されます。私はVSOの職員としてマラウイのMIEに派遣されているのです。

― VSOとMIEはどのような関係ですか。

ムチュング 日本のJAICAのアプローチと似ていますが、プログラムがあっても現地の組織に実行する力がない場合、VSOはその組織に入って支援をします。MIEは、マラウイの教育カリキュラムや教材などを策定・作成する政府機関で、私はそこで職員を指導したり、彼らと映像や音声を使った教材を制作したりしています。VSOのモットーは、"Sharing skills, changing lives(スキルを分かち合い、生活を変えよう)"です。

― では、これまでも番組を制作されてきたのですね。


ムチュング MIEにはスタジオ設備もあり、これまでにも、映像とオーディオ・コンテンツの作品を作りました。ラジオ番組として放送したほか、学校の教材、教師の研修教材としても使用しています。

― 今回の企画は公共放送であるテレビマラウイで放送するのですか。

ムチュング はい。番組枠があるのでそこで放送しますが、地方の人は、テレビを持っている人が少ないので、別の展開も考えています。DVDを作製し、国内の様々な組織とつながっているMIE研修開発センターを通じて、大学などに幅広く配布することを考えています。大学にはテレビやDVD再生機も備わっていますから。
 これまで、あまり役に立たないドキュメンタリーを数多く見てきましたが、自分はきちんと制作し、必要な人に届くようにするつもりです。そのためには、面白いドキュメンタリーにすることも重要だと思います。教師のなかにも本をじっと読むことを好まない人が多いので、映像と音声を使って面白く、エンターテーメントの要素のある作品に仕上げることが大事だと考えています。

― マラウイでは、1994年の小学校の学費廃止以降、就学者数は増えた一方で、施設や教員数が足りない
    と聞いています。教育の現状と課題についてお話ください。


ムチュング 学校の現状は悲惨です。私が出たケニアの学校では、少なくとも机、先生、教科書は揃っていました。でも、マラウイでは、極端な例を挙げれば、異なる年齢の生徒400人に先生1人という状況があるのです。その教師も何キロも歩いて学校に通勤し、疲労で400人を相手にするどころではありません。また、電気がないなど生活環境が悪く、士気の下がっている教師も少なくありません。子どもたちが学校に行けるようになっても、教育の質に関しては課題が山積みです。

― そんな中でも希望はあると、今回の企画で訴えかけていらっしゃいますね。

ムチュング 尊敬される立場にいる先生が、教材の材料を集めるためにショッピングセンターの前のゴミ箱をのぞいて歩いている。でも、その先生の熱心さは希望です。

― タイトル『テレビはダンボール箱』についてのエピソードを教えてください。

ムチュング 私が取材で地方に行き、ビデオカメラで撮影していると、ビューファインダーを見た子供の1人が、それをテレビだと思ったのです。彼は、ぼくたちもテレビを持っているというので、見せてもらうと、彼の先生が作った、ダンボール箱の中に紙の巻き軸を仕掛けた手作りテレビだったんです。その時は、まだこのドキュメンタリーを作ろうとは思っていなかったんですが。

― 現地の子どもたちとはどのようにコミュニケーションをとるのですか。

ムチュング 私は現地の言葉は話せませんので、仕事の指導では通訳を使いますが、子どもたちとは、表情や手振りなどで気持ちの表現を読み取ることによって、ある程度意思の疎通ができます。子供たちの反応は、言葉より重要です。3日前にも、渋谷の街で、日本の若い人たちとボディランゲージで友だちになったんですよ。
 私は、小さな子どもやティーンエージャーと話すときに、上から目線ではなく、同じレベルの仲間として接することにしています。そうすると子どもたちも私という存在を尊重してくれます。ドキュメンタリーを作るときは、取材対象の中に入り込み、彼らと同じ目線で制作することが大事だからです。今回の番組もそのようにして作るつもりです。

― 番組の完成を心待ちにしています。

ムチュング ドキュメンタリーは、音楽を創るような情熱で作ります。良いところや前向きなところばかりを強調するのではなく、悪いところ、問題のある点も描くつもりです。私のVSOからの派遣期間は2年で、来年の2月に終了しますが、このプロジェクトを含め、やり残した仕事があるので派遣期間を1年延長します。よい作品を作ることをお約束しますよ。
事務局 大園百合子


最終選考に残った5企画
タイトル 機関名
Our TV is a carton!
テレビはダンボール箱 <最優秀企画>
マラウイ教育研究所(マラウイ)
My Farm-My Classroom
農場が私の教室 <特別賞>
インド公共テレビ ドゥールダルシャン国際放送(インド)
Education on Wheels
教育を人力車にのせて
アグアン協会(バングラデシュ)
Social documentary on Youth in armed conflict in the democratic republic of Congo
コンゴ民主共和国の戦闘地域における青少年の社会ドキュメンタリー
インフォグループ・インターナショナル(コンゴ民主共和国)
JOINING HANDS-Beg for education
手を結ぼう-学びたい
ジョイニング・ハンズ・ネパール(ネパール)