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アフガニスタン国営放送でのこども番組制作研修
教育番組専門家 鈴木 勇

●RTA支援のあしどり
 RTA=ラジオ・テレビ・アフガニスタン=アフガニスタン国営放送。
 このRTAをはじめ、アフガニスタンの放送は長年の内戦とテレビ放送を許さなかったタリバン政権の政策によって大きな打撃を受けていた。
 そのアフガニスタンの放送の再建へ向けて、支援しようという決議が行われたのが、2002年10月、RTAも10年ぶりに参加して東京で開かれたABU=アジア太平洋放送連合の第39回総会であった。
 RTAは早速ABUと協議、ABU事務局の全面的な支援のもと、HBF(放送文化基金)の助成を受けて、こども番組の制作研修を行うことを計画、緊急申請が認められて、研修の実施が決まった。研修対象は、タリバン政権によって永年職業を持つことを認められていなかった女性の、しかも若手のプロデューサーである。
 この研修の指導者としてABUから指名されたのが、私・鈴木である。NHKの現役時代からJICAの専門家として、インドネシアなど数か国の放送機関で番組制作の指導をしてきた私は、元気なうちに持っているノウハウを伝えて各国の教育放送に寄与できればと考えていたので、ボランティアでこの役を引き受けた。
 ABUとHBFの協力でスタートしたこのプロジェクトには、今年4月からNHK関連団体のプロダクション、NHKエデュケーショナル(NED)も創立15周年記念事業として参加しており、今ではHBF−ABU−NEDの3者連携のRTA支援プロジェクトとなっている。

●研修のスタート 〜2003年11月

 イラク戦争の影響で、研修の開始は当初の予定より半年ほど遅れたが、2003年11月、私はアフガニスタンの首都カブールに入った。
 その頃のカブール市内は、各国の装甲車が走り回って、ものものしい雰囲気に包まれており、研修期間中にも国連関係者が車で走行中に射殺されるなど緊迫していた。放送局内もガードが厳しく、私はRTA職員と共に行動し、単独行動は危険がいっぱいなのでしなかった。
保育園での撮影
 こうした中、安全を第一にホテルとRTAを往復して、2週間の研修に当たったが、放送局内の連絡が十分でないのか、第1回の研修の受講者は若手ではなく、RTAの中でもベテランのディレクターばかりで、制作した番組もレベルが高いものであった。

●軌道に乗った2〜3回目の研修
 第2回の研修は2004年4月、そして第3回は6月に実施された。
 2回目の研修では、メンバーも一新され、当初の申請通り若手のディレクターも加わった14人となり、講義の他、NEDの支援によって提供されたカメラ2台を使っての保育園撮影の実習が行われた。カメラを使うのは初めてというディレクターも多く、研修成果が上がった。昔話や動物を主題とした話を保育園児たちに語るシーンなど実際の幼児教育に手馴れたお母さんの雰囲気がたくみに出ていた。
カメラ操作の研修
 第3回も14人が参加、「伝える」をテーマに研修を実施した。講義では、ラジオもテレビも正確に伝えることの重要さ、難しさについて、話し合い、実際にこどもたちの考えや動作を受け取るにはどうしたらよいかを学習した。それを踏まえて、2台から4台に増えたNED提供のカメラを活用し、撮影の研修として研修生に1昼夜カメラを貸し出し、こどもをテーマに撮影実習を行った。その結果、6人の研修生が、1時間テープにこども達の生活を撮影してきた。研修生の大半はこども番組班のディレクターで、何人かはディレクターを経験し番組管理部門の人たちもいる。番組編成をする上で、新しいこども番組の考え方を学ぶ必要があるというわけである。この人たちの中には孫がいる人も何人かいる。また、逆に、私はまだ結婚していません、こどもはいません、と初々しく言う研修生もおり、この方は友達のお子さんを撮影、よい経験でしたとの感想を言われた。


2004年12月掲載

平成14年、15年度 助成
「アフガニスタン国営放送局の若手女性プロデューサー番組制作の研修」
(代表者 教育番組専門家 鈴木 勇)