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平成21年度助成金贈呈式

 2010年3月5日(金)、東京・平河町の海運クラブで「平成21年度助成金贈呈式」を開催しました。
 平成21年度の助成対象は49件(うち海外4件)、助成金額は計6,500万円で、対象件数は、昨年度と同数。
 今年度の助成の申請件数は昨年度より5件多い145件で、採択されたのは技術開発で16件、2,600万円、人文社会・文化で33件、3,900万円(うち海外4件、530万円)。申請に対する採択率は34%でした。

【21年度の特徴】 

技術開発部門  
 高精細や3Dなど次の時代のテレビの開発を目指す研究が表示、伝送、記憶装置などの各段階で活発に行われる一方、大量の情報が人間の生理や心理にどのような影響を与えるか明らかにしようという研究が複数採択され、高度情報化時代の人間と放送の望ましい関係を科学的に分析・解明しようという動きが広がっている。
 ハイビジョンの次に予想されるテレビに関する研究では、「スーパーハイビジョンを目指したシート状ディスプレイの基礎検討」がある。超軽量で巻いて運搬できるシート状のPDPの開発を目指すもので、まだ要素技術の段階だが、家庭にスーパーハイビジョンを導入する際に必要な技術と評価された。
 人間の生理や心理に関連した研究では、「情報の過剰表示による記憶崩壊メカニズムの解明」がある。この研究は、どの程度の情報量なら視聴者は正しく理解し記憶できるか明らかにしようというもので、テレビの高精細化を受けて、画面に表示される情報がどんどん増えている今の状況に指針を与え得る研究と評価された。また、3Dテレビの二つの方式が人体に与える影響を評価しようという「立体映像の提示方式の与える生体影響の調査」や高齢者の色の見え方を簡便な方法で計測する「高齢社会に対応したカラー情報提供の基盤となる高齢者の色の見えの個人差の研究」なども人間に優しい放送が求められている今の時代にあったタイムリーな研究と評価された。
 この他、「オーロラの全天3次元映像化の研究」や高精細3次元CT装置を使って出土した土器の復元を試みる「遺跡発掘による出土遺物の計測・整理・デジタルアーカイブに関する基礎的研究」など放送関連の技術を他の分野に応用した研究も採択され、採択される研究の幅が広がっている。

人文社会・文化部門  
 新しいメディアが次々と生まれてくる中で、放送メディアの公共性を改めて検証する研究が複数採択された。政治や防災など社会が共有すべき知識をどのメディアで得ているか学生や一般視聴者を対象に調査・分析し、テレビの公共性が実際に機能しているか検証する研究やメディアの自由化が進むEUを対象にEUではメディアの多元性や公共性をどのように確保しているか考察する研究である。
 「放送と通信の融合」に関しては、放送コンテンツをインターネットで配信するIPTVのあり方を欧米の先行事例を参考にモデル化し、日本ではどのようなサービスが望ましいか考察する研究やインターネット配信に伴うコンテンツの保護制度に焦点を当てた研究などが採択され、日本での制度設計に向けた政策提言を志向する動きとして注目される。
 一方、放送が社会や地域の形成に果たした役割を歴史的に検証する研究やプロジェクトが複数採択されている。戦前のラジオで放送された“当選童謡”を通じて当時の音楽教育を考える研究など日本の事例だけでなく、多民族国家のインドネシアの公共圏形成にラジオが果たした役割や、香港のフェニックステレビが中国と日本、中国と台湾の関係に果たした役割などを考察する研究など海外に事例を求める研究も出てきた。
 こうした放送の役割を証言としてまとめるプロジェクトが複数採択されているのも今年度の特徴である。継続して実施されている「放送人の証言」のほか、「教育放送75年」、「伝統芸能放送85年」「女性放送者懇談会40年記念連続セミナー」などである。散逸しつつある放送台本をデジタル化して保存しようという研究も採択されており、ラジオ放送が始まって85年という節目を迎え、放送を日本の文化として記録に残しておこうという動きが広がっている。