平成18年度助成金贈呈式が、19年3月2日、東京千代田区で行なわれました。
18年度は、122件の申請があり、審査の結果、「技術開発」で15件、「人文社会・文化」で35件(うち海外4件)の計50件が選定されました。
贈呈式では、海外4件を除く46件に目録が贈呈され、2部門を代表して「技術開発」児玉和也氏、「人文社会・文化」鄭仁星(ジョン
インソン)氏が助成を受けた研究について紹介をしました。
また、贈呈式後の懇親パーティーでは、審査委員の方々や助成対象者との間で、分野を越えた交流が活発に行なわれ、昨年のこのパーティーがきっかけとなり、新たな研究プロジェクトが誕生したことなども紹介されました。
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◇技術開発部門 |
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空間映像情報を直接操作する
高機能フィルタリング技術の研究 |
国立情報学研究所 助教授 児玉和也 |
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私の研究対象は焦点ボケに関する画像処理です。この分野では、ボケた画像を鮮鋭なボケのない画像へと変換する処理が、古くから研究されています。これに対して、ボケの程度を調整し、少しだけボケた画像やさらにボケた画像を生成する、といった拡張が従来からの私の研究課題です。
焦点ボケはその形状も重要です。猫の瞳のような形に縦方向にしかボケない画像や星形にボケを生ずる画像などもあり得ます。ボケに凝るのはワビやサビと同様に日本人の特徴で、英語でもBokehという単語が国際会議で通じてしまうほどです。
さて、このような焦点ボケの処理の厄介なところは、撮影対象のうち近いものと遠いものでそのボケの程度が異なる、ということです。近いか遠いかといった距離情報を画像から直接に認識することは容易ではありません。そこで、焦点合わせを遠近に変化させながら撮影した沢山の画像を金太郎飴のように立体に並べてみます。これに3次元フーリエ解析という数学的な信号処理を適用し変換をほどこすと、距離情報を求めることなく、焦点ボケの程度や形状の異なる画像を得ることができます。
日本らしい映像技術として、研究をすすめていきたいと考えております。 |
◇人文社会・文化部門 |
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教育テレビ(E-TV)におけるインターネット活用
戦略に関する日・韓・英比較研究 |
国際基督教大学 教授 鄭仁星 |
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私の研究は、―日本、韓国、イギリス―3か国の主要な教育放送であるNHK、EBS(韓国教育放送公社)、BBCにおいて、各放送局における@インターネットの役割についての各局構成員(職員)の認識、Aインターネット関連の方針および、実際における活用戦略、B将来の計画等がどんなものであるかを比較分析するものです。ウェブサイト分析、アンケート調査およびインタビュー等を通して研究を行います。
放送が情報通信の技術を取り入れるにつれ、新しい“放送文化”が出現しています。インターネットは勿論、モバイルフォン(携帯電話)、MP3等が広く使用されるようになり、子どもや若者にとっては、“放送”は新たな意味をもったことばとして認識され始めています。
各教育放送局がこのような新しい文化にどのように対処しているのかを調査するという私の研究の結果をもって、特に子どもや学生たちを対象とする教育放送に対して、適切なインターネットの活用方針および戦略が提案できればと願っています。
いざ研究に着手しようという今、覚悟を新たにしておりますし、また大きな期待ももっております。ここにお集まりの研究者の方々も同じだと思います。私どもみなで、良い研究を通して変化する放送のおかれた環境、そして放送文化を、より深く、より広く理解することができればと願っております。ありがとうございます。 |