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日本の大衆文化開放による日韓視聴者の受け手研究
 〜アンケート調査からみた日韓テレビ番組に求める受け手のニーズ〜
東京家政学院大学 非常勤講師 黄 允一 (ファン ユンイル)

1. 目的と調査方法
 本報告では、韓国における「日本大衆文化開放」後の日韓テレビ番組の交流を通じて、日韓の視聴者のニーズと好みに焦点をあてることにする。2004年11月16日〜12月18日に東京半径35km圏内の12大学、ソウル半径35km圏内の10大学で集合調査を行い、各々94.2%と93.5%の回収率を得て1001名、1060名を分析対象※1にした。

2. 日本での「韓流※2」のきっかけは『冬のソナタ』

 日韓の大学生の「韓流」に対する認知度は非常に高い。日韓ともに約7割近くの大学生が、「韓流」のきっかけとなったのは、韓国のTVドラマ『冬のソナタ』であると答え、共通の認識をみせている。日韓の両国民を巻き込んだ「サッカーW杯日韓共催」について、日本の大学生の方がより評価していたが2割にとどまった。「日本大衆文化開放」に対する認知度は圧倒的に韓国の大学生が高い。また、韓国の大学生が日本の大学生より相手国に関する番組や情報をこれからも伝えてほしいと積極性をみせている。
 日韓ともに相手国のテレビ番組視聴、大衆文化に対して、女子大学生が男子大学生より好意的である。


3. 好きな番組、みたい番組

 日韓の大学生は、視聴時間・環境においてそれぞれの国の特徴をあらわしている。日本の大学生の1日平均TV視聴時間は、「2〜4時間未満」として、韓国の大学生の2倍である。相手国のテレビ番組に接する際に、主に利用するメディアは、日本の大学生は地上波放送とBS放送、韓国の大学生はCATVとインターネットである。
 日韓の大学生が自国で好んでみているテレビ番組のジャンルに共通のパターンがみられた。日韓の大学生は男女を問わず圧倒的に「娯楽・バラエティー」を挙げており、日韓の男子大学生は「スポーツ」、日韓の女子大学生は「ドラマ」という傾向をみせている。また、韓国の大学生が挙げている世界的に評価されている日本のアニメを除くと、日韓の大学生が好きでみたい番組は自国を超えて相手国においても一致する傾向がみられた。相手国への関心分野の因子分析でも、日韓の大学生の「エンターテイメント志向」がつよくでている。そのほかには、「観光・旅行志向」が強くあらわれた。日韓であきらかとなったそれぞれの志向をテレビ番組のジャンルに活かせていけば、日韓の大学生の好みとニーズに応える番組づくりに有効であろう。
 日韓の大学生は相手を認め合う部分も多い中で、日本の大学生は韓国人に対して、「感情的」「気が強い」、韓国の大学生は日本人に対して、「感情を出さない」「何を考えているかわからない」というイメージの対立構造(「アツイ韓国人」VS「ツメタイ・サメタ日本人」)が明らかになった。


4. 継続的な研究の必要性

 今回の調査結果は、相手国制作のテレビ番組接触が相手国に関する知識やイメージ形成などに関係しており、「韓流」「日本大衆文化開放」による大衆文化交流が始まった現段階では、テレビ視聴において、相手国のテレビ番組視聴に対して個人の先有傾向を示し、それを補強するような形になっていることがわかった。相手国人へのイメージは数年前に行われた飽戸弘・原由美子の調査と同じような結果が得られたため、短期間の相手国のテレビ視聴(メディア接触)による相手国人のイメージ変化までには繋がっていない。しかし、本調査は、「韓流」「日本大衆文化開放」されて間もない時期に行われたことを考慮すれば、相手国のテレビ視聴(メディア接触)の長期的、間接的な影響によるイメージ変化も期待できるかもしれない。
 日韓のテレビ・コンテンツの(共同)制作/流通はますます活発に行われている。日韓のテレビ局同士の連携も整えていき今後コンテンツを通じた文化交流はさらに深まると考えられる。
 「韓流」「日本大衆文化開放」の以前には日本の大学生の約1割、韓国の大学生の3割強だけが、相手国のテレビ番組に興味を持っていた。総じて、「韓流」「日本大衆文化開放」は日韓の大学生が相手国の大衆文化に関心をもてるよいきっかけになるといえる。


●好きなジャンルと相手国のみたい番組
好きなジャンル
日本男子
(n=355)
日本女子
(n=614)
韓国男子
(n=466)
韓国女子
(n=471)
娯楽・バラエティー
80.8
79.0
59.4
66.6
ドラマ
32.4
49.0
34.1
74.0
教育
4.8
6.5
2.1
1.3
映画
38.9
41.2
33.7
33.6
ニュース・報道
52.7
48.4
31.5
25.7
スポーツ
56.9
17.4
41.8
5.7
ドキュメンタリー
24.2
23.3
14.2
17.9
アニメ
12.4
9.9
11.4
14.5
音楽
32.4
50.5
18.2
22.3
特になし
1.1
1.0
1.3
2.3
その他
0.6
1.5
4.5
1.1
単位:% 複数回答(あてはまるものをすべて選択)

●好きなジャンルと相手国のみたい番組
相手国番組で
みたいジャンル
日本男子
(n=89)
日本女子
(n=216)
韓国男子
(n=252)
韓国女子
(n=250)
娯楽・バラエティー
36.5
25.2
38.2
43.2
ドラマ
29.4
56.7
41.8
73.2
教育
8.2
5.2
2.0
0.8
映画
54.1
56.2
39.0
39.2
ニュース・報道
36.5
29.5
8.8
8.4
スポーツ
27.1
6.7
10.4
1.2
ドキュメンタリー
35.3
19.5
10.4
8.8
アニメ
5.9
2.4
59.0
49.2
音楽
9.4
26.7
25.9
23.6
特になし
3.5
2.4
1.6
0.8
その他
1.2
1.0
3.2
0.4
単位:% 複数回答(3つまで選択)


※1 本報告では紙面の制約により、中高年層の分析結果は割愛させていただく。
※2 韓国大衆文化の流行現象。多くの場合、映画・テレビドラマ・音楽(K-POP) の流行についていう。もともと中国文化圏を中心とするアジア各国でみられた現象。韓流(かんりゅう)。三省堂提供「デイリー新語辞典」より。
 

平成15年度助成/人文社会・文化
「日本の大衆文化開放による日韓視聴者の受け手研究
  〜アンケート調査からみた日韓テレビ番組に求める受け手のニーズ〜」