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研究報告会

アメリカの地上デジタル移行過程における
非営利団体の活動と役割に注目して
清原 聖子 
 2005年デジタルテレビ移行と公共安全法の成立により、アナログ全国一斉停波の予定期日が2009年2月17日に定められると、地上波を直接受信している世帯向けの支援策としてデジタル・テレビ・コンバータ・ボックス・クーポン・プログラムの導入も決まった。それがきっかけとなり、それまでの行政と業界団体との官民協力の関係から、高齢者団体や図書館団体、マイノリティのための人権擁護団体などを巻き込んだ新しい協力体制へと変化した。なぜこれらの非営利団体がアウトリーチ活動に積極的になったのか。本研究ではその要因の一つは政策内容そのものにあると指摘した。同クーポン・プログラムでは、イギリスや日本のように年齢あるいは所得による受給制限を定めておらず、予算上限に達するまで先着順にクーポンが交付される仕組みであった。そのため、これらの団体は自分たちの会員や支持層に対してクーポンを早めに手に入れるように徹底的に周知を行う必要が生じた。全米退職者協会や公民権のための指導者会議などの非営利団体はボランティアを活用し、高齢者世帯に戸別訪問を行い、コンバータ・ボックスの設置支援に尽力した。また、全米図書館協会は家電量販店やローカル放送局と連携して、公立図書館がアウトリーチ活動の重要な拠点の一つとなった。アメリカでは高齢者団体や人権擁護団体が政治的に発達しているが、このクーポン・プログラムの実施によって、地上デジタル移行の問題についても、多くの非営利団体が自分たちの活動すべき領域と認識するようになり、アウトリーチ活動に関して重要な役割を果たした点が特筆に値する。

◆報告者 プロフィール
清原 聖子(きよはら しょうこ)
明治大学情報コミュニケーション学部専任講師
慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学、博士(法学)。東京大学大学院情報学環助手(現助教)、情報通信総合研究所研究員を経て、2009年4月より現職。2005年度フルブライト博士論文研究フェロー、ジョージタウン大学政治学部客員研究員。専攻分野は情報政策論、現代アメリカ政治。著書に「現代アメリカのテレコミュニケーション政策過程 ユニバーサル・サービス基金の改革」(2008年慶應義塾大学出版会)(第24回テレコム社会科学奨励賞受賞)。