(別ウィンドウで開きます) |
放送文化基金賞の応募方法がWeb申請に変わりました。 |
|
|
【本賞】NHKスペシャル 解かれた封印
〜米軍カメラマンが見たNAGASAKI〜 |
取材のきっかけは短いニュースだった。原爆投下後の長崎を撮影した元米軍カメラマンの死。亡くなったのは偶然にも8月9日だという。教科書にも載っている写真「長崎の少年」は見たことがあったが、撮影したオダネルさんについては、恥ずかしながらその日まで知らなかった。なぜ彼は40年以上も写真を封印し、なぜ後生になって母国の過ちを告発したのか。私と同じ疑問の答えを求め、足跡をたどろうとする息子の存在を知り、密着取材が始まった。次第に明らかになっていくのは、想像していたような聖人の人生ではなく、自国の戦争が生み出した光景を目撃してしまった、一人の人間の苦悩と葛藤だった。彼の遺した写真と言葉こそ、現代に投げかけられた“小石”ではないだろうか。その波紋が広がる未来を信じたい。
|
NHK福岡放送局 松本 卓臣
|
【優秀賞】ハイビジョン特集 ヤノマミ 〜奥アマゾン 原初の森に生きる〜
|
街中で死骸を見かける事が少なくなった。食べる者と殺す者とが別々なせいか、肉を食べる時に心が痛むこともない。しかし、ヤノマミの世界は違う。自分で奪う命は自分で殺し、感謝を捧げた後に土に還す。今日動物を捌いた場所で、明日女が命を産み落とす事もある。死は身近にあって、いつも生を支えていた。それは、余りにもリアルだったから、何度も打ちのめされた。私たちは死を想うしかなかった。そして死を想うことは生の輝きと同義なのだと言い聞かせて、番組を作った。力及ばず、正視できない人がいたとすれば、それは、私たちの責任だ。彼らは<野蛮>でも<凶暴>でもない。よく笑い、怒り、遊び、泣く。まさに、人間そのもの、だった。
|
NHK 国分 拓
|
【番組賞】NHKスペシャル 職業“詐欺”〜増殖する若者犯罪グループ〜
|
「騙される方がバカ」「世の中カネですよ」−振り込め詐欺に手を染めた若者たちは、平然と言い放った。振り込め詐欺の被害額は、ここ5年で1300億円を超え、被害者は延べ10万人に達しようとしている。これほど大規模な犯罪を、一体誰が犯しているのか。ほとんど報道されてこなかった犯人像に迫ったのが、この番組である。犯罪者たちは一様に若い。大企業をリストラされた男性、家庭を持つ元会社員、大学生。判で押したように、タワーマンション、高級車、女性を追い求めていた。罪の意識もなく、欲望を剥き出しにする姿に、私たちは怒りというより、絶望に近い感慨を覚えた。即効性のある対策は思い浮かばず、取材実感をそのまま伝えるしかなかった。結果、この様な高い評価を頂けたのは、望外の喜びである。 |
NHK 横井 秀信
|
【番組賞】ハイビジョン特集 “認罪”〜中国 撫順戦犯管理所の6年〜
|
撫順の捕虜収容所で過ごした人たちの多くは、帰国後様々なレッテルを貼られ、口を閉ざしていきました。取材に行くたびに「きみは何を言わせたいのだ」と言われ、そのたびに、「僕は何があったのかを知りたいだけです」という言葉を繰り返し、ひたすら話を聴き、その裏づけをとり、資料を発掘し、疑問点が出れば、また話を聴くということを重ねました。そこで起きたこと、彼らの心中はあまりに複雑で、それに何か方向性をつけるのではなく、複雑さのままに伝えようというのが、僕のできることでした。まだできることはあったのではないかと今も自問していますが、中国での日本軍の行動を「罪」として一身に担わされた人たちの証言を、記録し残せたことに、少し安堵しています。 |
テムジン 中村 豊
|
【番組賞】映像’08 家族の再生 〜ある児童養護施設の試み〜
|
たくさんの人の力を借りて作り上げた番組が評価を受けて、とても嬉しいのですが、一方で、作り手として複雑な思いもあります。
番組では、親の虐待や育児放棄などによって、否応なく家族関係を奪われた子どもたちの日常を追いました。「家に帰りたい」と涙する男の子。「お母さんのことは恨んでいない」と言い切った小学生・・・。誰もが、“家族の再生”を信じて懸命に生きていました。
この前向きな生き様が、番組の力になったわけですが、放送から1年が経った今も、彼らの置かれた“厳しい現実”は何も変わっていません。それどころか、親の勝手で、子どもが命を落とす事件が後を絶ちません。
家族の崩壊が進む中、メディアは何を伝えていかなければならないのか。何を伝えていけるのか。これからも考え続けたいと思います。
|
毎日放送 米田 佳史
|
|