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研究報告会
技術開発研究報告

放送のカラーユニバーサルデザイン
(CUD)化に向けて
動画CUD化研究グループ 代表 前川 満良 
石川県工業試験場 研究主幹
■はじめに
 1960年代にカラー放送が開始され、今ではモノクロ受像機でテレビを観ることが希な社会となった。カラー放送の開始当初は、モノクロ受像機で観ることも考慮してモノクロでも情報が伝わるように文字や図表の配色、色名に頼った説明をしないなどの配慮があった。しかし、時代が遷り変わるにつれてカラー放送が当たり前になり、色名に頼った説明など当初の配慮が失われてしまったのではないだろうか。あたかも、世の中の人がすべて同じ色に見えている人ばかりであるかのように。しかし、現実的には人間の色覚は多様であり、特定の色の組合せが分かりにくい色弱者は日本国内に300万人以上いるといわれている。公共の電波を使用する放送業界としては、このような色弱者に配慮した放送が必要不可欠なはずである。そこで、放送内容の中から色弱者にとって見分けにくい色の組合せを見つけ出すために、色弱者の見え方の特性について研究を行なった。

■研究内容
 色弱であるか否かに係わらず、文字の大きさが同じで、形も同じであっても、背景色と文字色の組合せによっては読み取れない場合がある。色の違いが分かるか否かを判断する尺度として、2つの色の距離(色差)があり、工業製品の品質管理などに用いられている。しかし、この色差は色弱者の色の感じ方によるものではない。したがって、色弱でない人にとっては十分な色差であっても色弱者にとって文字を読み取るのに十分な色差である補償はない。そこで、色弱者が色の差をどのように感じているのかを調査した。
 その結果、青色の差より黄色の差の方が感じにくい、明るくなるほど見分けにくくなる色差は小さくなる、などの特徴があることが分かった。また、背景と文字の色の違いがはっきり分かる色差でも、文字としては読みとりにくいといった興味深い結果が得られた。これは、これまでの色差では色弱者の文字情報にふさわしい使用できない色の組合せをチェックできないことを示している。
 これらの結果から、色弱者にとって色の感じ方が均等な新しい色空間が定義できるようになった。この色空間内の色差を用いることで、放送内容における配色のチェックが画一的に行えるようになることから、今後は放送内容をチェックおよび自動修正するシステムへ発展させていく予定である。

●おわりに
 放送業界の方々に「色弱者が不便に感じていることに気づく切掛けとなるように」、そして「放送内容が色弱者を含めた多様な色覚の方々にも対応するカラーユニバーサルデザイン(CUD:Color Universal Design)に取り組む切掛けとなるように」とこの助成事業に応募した。結果として、研究の助成だけでなく、放送業界で制作に携わっている大勢の方々を前にして報告できるチャンスまでいただき、深く感謝する。この研究及び活動が今後のCUDな放送制作にも寄与できれば幸いである。

◆研究報告者 プロフィール
前川 満良(まえかわ みつよし) 
石川県工業試験場 研究主幹 博士(工学)
1962年生まれ。1987年金沢大学大学院工学研究科修了。1991年石川県入庁、工業試験場勤務。1996~2009年リハビリテーションセンター兼務。この間、バリアフリー技術、ユニバーサルデザインの研究、開発に従事.現在に至る。金沢美術工芸大学、金沢学院短大非常勤講師、NPOカラーユニバーサルデザイン機構テクニカルアドバイザー。色弱者の見え方に関する研究はCUDソフトプルーフ(擬似変換)機能としてAdobe Illustratorなどに標準搭載されている。