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■フォーラム報告
(HBFNEWS 7号より)
村木 良彦
メディア・プロデューサー
12月4日、放送文化基金主催の「制作者フォーラムinとうきょう」に参加し、刺激的な時間を過ごした。参加者、スタッフの皆様、ごくろうさまでした。
第一部・ミニ番組コンテストの12作品は、制作者のプレゼンテーションがあって作品を見る、そして質疑応答となる。各地区の予選通過作品が集ったためか、なかなか充実感があった。5分前後の時間の持つ情報量の大きさ・深さは、つくり方によっては驚くべきほどのものがあること、さらに複数の地域、制作者のものをまとめてみると連想がとめどなく拡がっていくことがよくわかった。
私が最も面白く見た(聞いた)のは新潟放送のただひとつのラジオ番組『今すぐ使える新潟弁』であったが、北海道テレビの新人女性自衛官を追った『先輩はイラクへ』や信越放送の『Tears in Heaven』、九州朝日放送のヒヨドリを追った『関門を渡る影』の映像なども短編とは思えないくらい、なかなか見ごたえがあった。
ほかには、31年前のミステリアスな事件を追った琉球朝日放送の『検証!那覇空港小象失踪事件』や北陸朝日放送の『金沢百景』、テレビ西日本の『薬害肝炎訴訟・原告密着取材』などが印象に強く残った。いい作品はプレゼンテーションも堂々としていて不思議な相関関係を感じた。表現力の問題になるのであろうか。夜中にでも、全国のこのような短編とそれを素材にしたトーク番組を一日中流すようなチャンネルがあってもいいと思った。
第二部のフォーラムは、地域と放送の新しいつながりを求めてというテーマだが、制作者は変りつつある地域にどのように向き合っているか、地域社会やより良い視聴者をはたして育ててきたか、育てられてきたか、という前半と、放送は市民のものとなっているかを問う後半とが、なかなか難しい展開であったが、各地域の制作者のレポートなども含めて地域の制作者がかかえている問題や課題がかなり浮き彫りにされたのではないか。
何年にもわたって各地で展開してきた制作者フォーラムの成果を、今後どのように発展させていくかが次の大きな課題となろう。
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藤岡 伸一郎
『総合ジャーナリズム研究』編集長、関西大学社会学部教授
「…お客さんは、確実に変わりつつある」
ことし4地区で開催された制作者フォーラム、各地区それぞれの報告のなかで、四宮康雅さん(北海道テレビ)がこう指摘した。パネラーの土肥さん、村上さんの二人も「視聴者の変化」は「地殻変動としてあるのではないか」と、言葉を違えて語っている。
地上デジタル化への、厳しい対応が迫られる地方局にとって、ネガティブな話は多い。しかし、それでもいま得つつある「収穫」がある。それぞれの制作者が根ざす地域社会、地域の人々(お客=視聴者)ときちんと向き合うこと、ここをまず再認識している点だろう。
当然のこととして、いま前提になっているといってもいい。そこから「地殻変動」が見えてきた。どう立ち向かうかはまさにそれぞれ。「とことん地域に入り込む」とは、馬原さん(テレビ宮崎)。「声なき声を地方から発信する」と、坪田さん(福井テレビ)はいう。
パネラーのひとり、いまは東京が拠点の右田さん(NHK)も、ドキュメンタリー制作にあたって「地方からはなれない」といえば、詩人でエッセイストの白石さんも「物語は地方の方が舞台になる」とうなずいた。
地方から逃れられない。立場は違えど、このこともはっきり見えてきている。
ちょうど10年前になる。阪神・淡路大震災が起きたとき、直後の混乱がつづくなかで取材したときのことを思い起こした。
「我々は、もうすぐ帰ります。ですが彼らはここで居つづけ、ずっとこれからも、この街でこの事態と向き合っていかねばなりません」
他県の地方局TVクルーのひとりが、こうつぶやいたことは忘れない。阪神地区の、地元のメディアはそれから10年、破壊と建て直しのさま、「そこに居る人々」と向き合ってきた。
地方局の制作者たちは「そこに居る」ことでしか見えないもの、「居つづける」ことでしか出来ないこと、伝えられないこと、それをやってきたことは間違いない。
さまざまな地方、だがいま「さまざまな日本」に見えているかどうか。これから、そこが問われてくる。新たな時代の「地殻変動」にどう向き合い、どんな「つながり」を構築していくのか、期待は膨らむ。今回のフォームから、そんな得難い印象をもった。
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