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話題の放送番組を見る会・語る会(第7回)開催報告
 平成19年11月25日(日)、秋田市のALVE多目的ホールで「2007北日本制作者フォーラムinあきた」と同時開催された。ゲストに2007北日本制作者フォーラム「番組部門」大賞を受賞した熊谷光史氏と、大脇三千代氏を迎え、丹羽美之氏の進行で行われた。会場には放送関係者、市民約60名が集った。

『僕の体が骨になる〜難病FOPと闘う少年』
(放送日:2007年5月7日(月)25分)
※2007北日本制作者フォーラム「番組部門」大賞受賞作品
熊谷 光史(くまがい こうし)氏(宮城テレビ)
 筋肉や関節が除々に骨になっていく病気FOP。200万人に1人と言われるほど症例が少なく、治療法の研究も進んでいない。
 宮城県に住む小学校5年生の武田捷冶(しょうや)君。サッカーや縄跳びをして遊ぶのが大好き。しかし、病気は捷冶君の体から除々に自由を奪っていく。発病して8年。初めて同じ病気と闘う女性に出会う。今を精一杯生きる少年と温かく見守る家族を追った。

『消える産声〜産科病棟で何が起きているのか〜』
(放送日:2006年5月28日(日)55分)
※日本民間放送連盟賞テレビ報道番組最優秀賞('06)
大脇 三千代(おおわき みちよ)氏(中京テレビ)
 地域の病院で出産できなくなっている。その背景にあるのが深刻な産科医不足。激務、被訴訟率の高さに加え、“改革”と“規制緩和”が重くのしかかっている。急速に進んだ産科医療崩壊の実態を取材し、医療行政への警鐘をならすとともに、踏みとどまって耐える医師たちの思いを伝える。

 上記2本の作品を視聴後、それぞれの制作者が自らの作品を語り、会場参加者と意見交換を行った。
 
 熊谷氏は、この番組を制作するにあたり、初めは病気のことを人々に知って貰いたい、伝えたいと思っていたが、取材を進めて行く過程で、病気の辛さではなく、家族の温かさ、少年の今を生きる一生懸命さを伝えたいと思うようになった。また、難病にかかわる国の制度についても伝えるかどうか考えたが、25分という枠の中で、伝えたいのは家族の温かさだと思い、番組の中では多く触れなかったと語った。
 熊谷氏は入社8年目のニュース記者、これまでも“人”を中心に取り組んできたと語り、25分という長さの編集の難しさにも触れた。 

 大脇氏は、この番組はテレビ局に送られてきたテープがきっかけだったという。病院長が流産の患者に発したひどい言葉。そこにあるのは院長の人間性ではなく、もっと大きな背景があるのではないかと思い、取材を始めた。しかし、取材しているそばから産科医療の事態が日々悪化して行く状況に、番組が放送される頃には時代遅れになるのではないかとあせりすら感じた。ふだんの取材では“人にはやさしく、事実には厳しく”ということを心がけ、悪者を作らないようにも、と語った。感情と社会現象のバランスをどうとっているかとの質問には、感情を上回る量の取材を日々めざしているとこたえた。

 両氏は、仙台と名古屋と離れていても同じ系列局の制作者として、NNNドキュメントという番組枠で会う機会もあり、お互いに企画書の段階から刺激を受けていると話した。

 コーディネーターの丹羽氏は、テレビ番組に欠けているもの、それは「批評」だとし、冒頭でこうした「語る会」の意義について触れた。また、両氏の例をあげ、地域を超えた系列局の力、また制作者フォーラムのように系列を超えた地域の連携が、制作者にとって番組作りへの強い意欲につながっていることを会場にむかって投げかけ、3時間に及ぶこの会を締めくくった。



◆◇◆「しなやかなつながり」が生み出すパワー◆◇◆
中京テレビ放送 報道局報道部 大脇 三千代
 北海道・東北地区のみなさんとともにすごした「番組を見る会・語る会」。
とても心地よいひとときでした。
(ご覧いただいた『消える産声〜産科病棟で何が起きているのか』の取材地のひとつが岩手でしたので、東北地方は番組の“ふるさと”のようにも感じています。)
 今回は奇しくも、日頃『NNNドキュメント』の制作を通じて励まし合っている宮城テレビの熊谷光史さんともご一緒したわけですが、お話をしながら、会場に集まったみなさんの表情を拝見するにつけ「あ〜『番組づくり』という思いで、たくさんの人とつながっているなぁ」と実感できました。それが何より嬉しいことでした。この感覚が、「次」への支えになります。コーディネーターの丹羽美之さん(法政大准教授)がご指摘されていた「局を超えて系列の制作者同士でつながる」「系列を超えて地域の制作者同士でつながる」ことの大切さ…。
 ローカル局から「ひとつの思い」を「番組」として送り出すって、大変ですよね。
メゲそうになること、しばしばです。でも、今回のような「しなやかなつながり」が生み出すパワーを信じたい、と改めて思いました。そして、自分のすぐ隣で生きている人それぞれの喜怒哀楽をともに感じることができる自分でありたい、放送でその思いを共有したい、と強く願いました。
ふんばって(笑)つくっていきましょうね。