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話題の放送番組を見る会・語る会(第4回)開催報告

 平成18年3月14日(火)、第4回「話題の放送番組を見る会・語る会」を東京・海運クラブで開催した。コーディネーターは、以前勤務した放送局で番組制作の経験を持つ法政大学助教授・丹羽美之氏に依頼した。ゲストの制作者とコーディネーターはともに30代。会場は放送関係者を中心に60名の参加があり、制作者の所感を含む活発な意見交換が行われた。

『漁士の決断 〜第五福竜丸乗組員の50年〜』
(2004年7月24日(土)放送)
亀山 貴 氏(テレビ静岡 制作部)
<ストーリー>
 昭和29年3月1日、静岡県焼津市のマグロ漁船・第五福竜丸が南太平洋ビキニ沖で水爆実験に遭遇、23人が被ばくした。水産食品加工の街・焼津は「水爆マグロ」騒動で経済的損失を受け、彼ら乗組員を複雑な思いで迎えた。放射能への誤解、見舞金への妬み、平和運動の分裂騒動に巻き込まれ、乗組員は口を閉ざしていった。再就職や結婚の不安に揺れた日々。事件から50年経ち、ほとんど知られることのなかった彼らの第二、第三の被害に焦点を当て、「その後の人生」を取材した作品。 
『ある出所者の軌跡 〜浅草レッサーパンダ事件の深層〜』
(2005年6月5日(日)放送)
後藤 一也 氏(北海道文化放送 報道部)
<ストーリー>
 5年前、浅草で発生した女子大生刺殺事件。レッサーパンダの帽子をかぶった犯人は札幌出身の強制わいせつの前歴がある軽度の知的障害を持った男だった。だが、熱狂したメディアに事件の背景を探るものはほとんどなく、取材した後藤記者は、もし、彼の服役中や出所後に社会が手を差し伸べていれば、との思いを残した。5年を経て今、出所者の再犯が大きな問題となっている。後藤記者は出所した軽度の知的障害を持ったある男性への同行取材を通じて、再びこの女子大生刺殺事件の背景に迫った。 

◆◇◆見る会・語る会に参加して・・・◆◇◆
 <亀山氏>
 「漁士の決断」の制作に関わったことで最も良かったと思う点は、番組を通じて様々な方に会う機会を得たことです。今回「番組を見る会」に呼んでいただき多くの先輩から制作当時気づかなかった視点からのご意見を聞くことができました。
 また、UHB後藤さんの「ある出所者の軌跡」は先日まで警察・裁判の取材を担当していた中で見過ごしてきた問題を突きつけられた思いでした。法廷でも被告が状況を理解しているか否か判然としないまま裁判が進む光景、また出所後行き先がなく生きるために「刑務所志願」で再犯をする人はしばしば見られます。果たして何のために裁判や刑務所があるのか、全ての記者・警察・法曹関係者に見てもらいたい番組だと感じました。
 日頃静岡で仕事をしており他県の人と交流する機会があまり無いため、またとない勉強の機会をいただきました。現在はスポーツ番組や中継の制作に追われる生活ですが、これからも研鑽のため参加させていただけたらと願っております。
 <後藤氏>
 テレビ局で番組を制作していて不満だったのは、視た人の反応を直接目にする機会がないことだった。『ある出所者の軌跡』は試行錯誤を重ねた作品だった。一見関係がない“出所者S”と“レッサーパンダ事件の犯人”の二つの映像を交差させたのは「視る人の想像力を掻き立てたい」「心の中に何かを落とす作品にしたい」と思ったからだ。しかし私自身揺れながら作ったので、自信がなかった。当初、大勢の参加者を前に“まな板の上の鯉”のような気分になり、緊張した。視た人それぞれの批評や感想を聞くにつれ、次第に勇気づけられた。自分の作品を視た人と対峙し、作品を通して人間や人生について語り合うことは、本当に有意義で素晴らしいことだと思う。同時に、参加した方々の反応を眺めていると、テレビは同質なマスではなく、異なる感覚や意見を持った一人ひとりの人間に思いを伝えているのだと実感した。なぜか今後の制作意欲がフツフツと沸いた。