●ミニ番組コンテスト入賞作品
参加番組17本の中から、審査員によって、最優秀賞1本、優秀賞2本、特別賞2本が選ばれた。また、今コンテストはテレビ番組のみの参加とした。(注:過去4回はラジオ番組も参加していた)
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<敬称略。同賞はエントリー番号順> |
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歌の力 |
石川テレビ放送 釜田 麻依子 |
石川県金沢市で育った人ならば、誰もが踊ることができる「若い力」という歌のルーツを探った番組です。
1947年、第2回国体の開会式を飾るアトラクションとして考えられたのが、金沢市内の小学校6年生全員を集めて、大会歌「若い力」を踊ることでした。
以来、脈々と受け継がれてきたこの歌のルーツに、戦後の復興を目指した人たちの熱気のようなものを感じました。第2回国体のマスゲームに参加した、現在75歳の男性と、街中の高校生。彼らには「金沢市民」という共通点しかありませんが、「若い力」を聴いたなら、そこに会話が生まれるでしょう。取材を通して、歌の持つ、人と人とを繋ぐ力に気付かされました。
最後になりましたが、このような素晴らしい賞を頂き、誠に光栄に思います。出演していただいた市民の皆様と、共に作品を作り上げたカメラマンをはじめとしたスタッフに、感謝します。
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●基調講演 |
「ローカル局は、いま何を発信すべきか」 |
作家の吉岡忍氏は、制作者にとっては、ものを“知りたい”“知る”という自分の内なる要求が大切。外的事実だけを伝えるのではなく、奥深く取材し、そのうえで考えたことを発信すべきで、知りたい欲求がなければ、企画の趣旨にあわせた都合のよい、コメントと映像の調達で終わってしまう。取材相手とはコミュニケーションの取れた取材をして欲しいなどと語った。また、会場から、最近は不祥事に対して企業が非常に敏感になっているために、制作段階で細かな制約がつき、制作者は口を閉ざしてしまう傾向が出てきているのではないかという声に、吉岡氏は、制作者側も視聴者の側にも、テレビには人称がないと皆が思い始めてきて、最大公約数的にしか言えなくなり、通読的なことしか言えなくなってきているということが、今のテレビをつまらなくしている原因にもなっている。活性化するには制作者の内部的自由を確保することが大切と話した。
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●講演 |
『龍馬伝』制作秘話
「アイディアはどこから生まれる?」 |
NHKディレクターの大友啓史氏は、アメリカ留学をした時に体感した“オリジナリティ”を大事にしていると話し、それこそが世界に通じるのだと言う。その確信を下にNHK大河ドラマ『龍馬伝』をどう演出したのか。50年におよぶ大河ドラマ制作歴史のなかで培われたノウハウや、時代劇独特の仕来りなどの枠を外し、自分流の撮り方・進め方をする為には、スタッフ・出演者に理解してもらうことが大切。そのためには徹底的に話し合う必要があり、それによりお互いが鍛えられ、その中からアイディアが生まれるなどと、大友節とも思われる口調で熱く語った。
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●若手ディレクターとの対話 |
吉岡 忍氏、大友 啓史氏
新潟在局の若手ディレクター、記者
安田 哲郎氏(NHK新潟放送局)
逸見 枝里氏(新潟テレビ21)
西尾 拓哉氏(テレビ新潟放送網)
小師 友彦氏(NST)
白岩 嘉文氏(新潟放送)
※写真左から
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5人の若手制作者が参加し、日頃番組を制作する中で感じている「悩み」などを両氏に相談し、問題解決のヒントをもらい議論を重ねた。
質問には、インタビューの意図を理解してもらうには? 本質に迫る言葉を引き出すには? などの日頃の悩みがあり、それらに対しては、両氏ともコミュニケーションをとる努力を惜しまないことが大切と言い切り、意思の疎通がなければ、自分の引き出したい答えを求め取材の調達になってしまう場合があるので、自分の中にシナリオを作らないこと、いきなり核心をついても相手は用心するだけ、答えやすい具体的な質問を2つ3つしてから本質に入るとつい本音も出てきやすい、などのヒントも交え、キャリアを越えた活発なやり取りがあった。
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若い力、繋がる
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ミニ番組審査委員 竹島 勇(東京中日スポーツ文化社会部記者) |
「若い力と感激に…」 軽快なメロディーに合わせ踊る人、人、人。北信越地区制作者のミニ番組コンテストで、若き17人の作品のトップに立ったのは、石川テレビ放送の「若い力」。ディレクターは今年入社したばかり、とまさに若い力だ。
1947年の金沢国体で生まれた曲を金沢で生まれ育った人は老若男女踊ることができ
るという話をテンポ良くまとめた。
地元の話題だが、幅広い視聴者を「繋げる」力がある。しかも楽しい。テレビの力を地域で示したものと感じいった。
会場では、それぞれの地域から集まった若い力(制作者)たちが、番組作りの工夫や苦
労などを率直に話し合う姿があった。同じような喜びや悩みを共有していることを知る。
刺激を受ける。良い番組と同様に「繋げる」力がこのイベントにはある。
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フォーラムを終えて |
北信越制作者フォーラム実行委員会
野島 常雄(新潟放送取締役報道制作局長)
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今回のフォーラムには吉岡忍さんと大友啓史さんという素晴らしいゲストをお迎えすることができました。吉岡さんのお話では「自らが知るために取材する」という言葉が、また大友さんのお話では「オリジナリティが無ければ世界には通用しない」という言葉が印象的でした。続いての若手ディレクター・記者との対話では、最後に両氏がご自分の若かりし頃の姿を紹介。吉岡さんは何年間も世界を旅して現地でゆかりの本を読むような(例えばビルマの竪琴)生活を続けられたことを、大友さんは入局当時の支局歓迎会でのほろ苦い失敗談などを披露されました。そう、若い制作者の皆さん、お二人とも若い時は悩んだり、苦しんだりしていたのです。あなた方も今、色々な壁があると思いますが、今回のお話も糧にして未来に向かって進んで欲しいと願っています。 |