●ミニ番組コンテスト
参加番組24作品の中から、大賞1本、優秀賞2本、審査員特別賞2本が選ばれた。 |
<敬称略> |
●基調講演
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「いまテレビ制作者が問われていること」 |
森 達也 氏(映画監督/ドキュメンタリー作家) |
森氏は、報道の素材はまわりにたくさんあるのに、自己規制をしていると会場にいる若手制作者に向けて指摘した。また、森氏は、テレビは世界を大きく変える化け物である。テレビは感染力が強いメディアであるから、その影響力の大きさを再認識してほしいと語った。 |
●作品上映・制作者トーク
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◆『命をつなぐ〜臓器移植法10年 救急医療の現場〜』(北海道放送) |
山普@裕侍 氏 (北海道放送 報道情報局報道部) |
<番組部門大賞作品>
※同地区は、ミニ番組コンテストのほかに、長尺番組を審査する番組部門を設けている。 |
【番組あらすじ】
臓器移植法の施行から10年経過するが、わが国の移植医療はなかなか進んでいない。番組は、移植医療が進まない背景を探りながら、臓器提供に取り組む市立札幌病院救命救急センターを取材して、臓器提供の現場にメディアとして初めて密着した。 |
◆『ネットカフェ難民〜見えないホームレス急増の背景〜』(日本テレビ) |
水島 宏明 氏 |
【番組あらすじ】
生活に困窮して家賃を払えなくなり、ネットカフェに寝泊りする人たち「隠れたホームレス」が増えている。背景には「貧困ビジネス」や「日雇い派遣」の存在がある。多くのネットカフェ難民は日雇い派遣で生計をたてている。彼らネットカフェ難民の生活を通して、行き過ぎた規制緩和が生み出した<今の働き方>のひずみを明るみにし、社会に是正を迫る番組。 |
水島宏明氏は、メディアが見過ごしてきた貧困問題にいち早く取り組んできた経緯を話した。フォーラムに参加していた若手制作者から、ジャーナリストとしてのモチベーションをどのように保っているのかという質問に対して水島氏は「現場にいると、ここにいて良かったと思える瞬間が必ずある」と語った。 |
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脚本家から見たドキュメント番組
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脚本家 阿部 美佳(北日本制作者フォーラム ゲスト審査委員) |
「ドラマを学んできた人間にドキュメントの審査員が務まるのか」そんな不安を抱きつつ、一方では「北の大地からどんな面白いキャラクターが飛び出してくるのだろう」とワクワクしながら参加致しました。24作品拝見した率直な感想は、ドキュメントもドラマも面白さのポイントは同じだということです。魅力的なキャラクターが登場し、観客の予想をちょっぴり裏切りつつ、滑稽なぐらい必死に前へ進もうとする。その過程を制作者のたくさんの愛と少しの毒を持って表現しているものに惹かれました。どんな小難しい問題も、悲しい事件も、やっているのはすべて人間です。描く上でもっと人間の可笑しみ・ユーモアが欲しい。その辺の描き方が画一的なのが残念でした。(寒い国の人間は概して生真面目でお行儀が良いのです。)地方にいるからこそ、世の中の歪みが顕著に感じられることがあります。私がドラマの題材を見つける時も意識していることです。私たちモノ作りは一生勉強! アンテナをビンビン張って地方から中央へ、そして世界へメッセージを送り続けましょう。たくさんの刺激を頂き、ありがとうございました。 |
刺激に満ちた濃密な2日間…
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山形テレビ 報道制作センター部長 庄司 勉 |
景気低迷やデジタル化への投資増大で地方局は青色吐息。制作現場は疲労困憊。そして閉塞感も漂う。そんな状況にあっても、北国のテレビ制作者たちは、寒風の中、熱き思いを胸に山形市に集まった。フォーラム開催直前になって、解散風がぴたりと止んだことが功を奏したのか、予想を上回る参加者数につながった。
番組審査には、ミニ番組部門に24作品、長尺番組部門に32作品が応募、入賞作品の選考は非常に難航した。
今回のフォーラムでは2人の講演が非常に好評だった。
山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞しているドキュメンタリー作家森達也氏。彼の基調講演は刺激に満ちていた。単純化された結論を欲しがり、無意識のうちに自己規制しているテレビ界の実情を指摘し、若手制作者を大いに挑発してくれた。
講演のために10枚ものレジュメを用意してくれたのは『ネットカフェ難民』の制作者水島宏明氏。メディアが見過ごしてきた貧困問題にいち早く取り組んできた水島氏は、札幌時代からの取材活動を振り返りながら、制作者の視点・心構えを熱く語ってくれた。
運営に当たった私自身、大いに刺激を受けた濃密な2日間であった。
最後に、水島氏のレジュメからこの言葉を。『社会の矛盾は、事件として芽を出す。その瞬間をつかめ!』 |