●ミニ番組コンテスト入賞作品
ミニ番組コンテストでは、九州・沖縄の制作者による参加番組32作品の中から、グランプリ1本、準グランプリ2本、審査員特別賞5本の計8本、さらに今回は熊本の大学生6人にも参加してもらい、学生審査員賞1本も選ばれた。 |
<敬称略> |
●映画監督・山本晋也
氏による講演 「ニュースは娯楽か?」
山本監督は、刺激的な言葉で若手制作者に対して「ニュースでは、心ない取材をすることが必要である。そうすれば見ている側はそのニュースを判断することができ、批判する余裕を生むこともできる。心ある報道は、ともすると娯楽になってしまう危険性をはらむ。」と語った。また、若手の制作者に対し「必ず現場へ行くこと、パソコンの前にばかりいたのでは、他の人と違う何かは見つけられない。現場が一番大事!」と、長年の取材経験を踏まえて語った。 |

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熊本で見た映像ジャーナリズムの原点! |
日本テレビ 解説委員・ディレクター 水島 宏明 |
ミニ番組の審査員を務めた。テレビの制作者はミクロな出来事の展開に目を奪われがちで、その全国的・世界的な意味や背景というマクロな視点を伝えるのは苦手だ。その点、良いお手本は上映された『石炭奇想曲 夕張、東京、そしてベトナム』。石炭問題を歴史的、世界的に検証し直し、その場しのぎの国策に翻弄された夕張の悲哀を見事に浮かび上がらせた。私は地方発のミニ番組にも「実はこういう意味がある」というジャーナリズムの視点・発見があるかどうかに着目した。加えて眼差しの温かさも。沖縄の離島での『路上寝の実態』というユニークな報告。耳の不自由な女性ボディボーダーへの応援歌『音のない世界を楽しむ!』。制作者の人間性が伝わる秀作ぞろいだった。不満があると自傷行為に走る猿と女性調教師との関係を描いた『猿のタケトと蓉子さんの仲』。自傷に走る人間の子供と姿がダブり、親子関係を考えさせられた。たかが猿、しかしそこには…という切り口はジャーナリズムの真骨頂ともいえた。グランプリの『家族6人一緒だよ』は飲酒運転被害で一度に3人の子を失った夫婦が新生児を授かる瞬間に密着、分娩にもカメラが立ち会う。赤ん坊の産声が聞こえた瞬間―、妻が突然号泣する。夫も泣き出す。失った命の代わりに授かった命。「寂しい」とつぶやく妻。埋めようがない喪失感が視聴者の胸にも迫る。マクロな意味のジャーナリズム性があるかとなると疑問は残る。それでもグランプリに推されたのは「映像と音による圧倒的な強さ」。これぞテレビの本質だった。ただこの作品も含め過剰なナレーションや字幕、加害者を悪と決めつけるステレオタイプ、独占取材を主張する俗っぽさ等が全般に鼻につき、見る側に「感じさせる」余地「考えさせる」余地を与えないテレビ制作の現状には再考を促す意見が相次いだ。交流会で若い制作者たちは「木村栄文さんにこう教えられた」というエピソードを口にしていた。九州の“巨匠”木村栄文氏による若手勉強会の系譜。この映像祭も含め「テレビの意味を考え」「受け継ぐ」ことの大切さを痛感する良い機会になった。 |