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35周年記念国際シンポジウム テレビがつなぐ東アジアの市民

シンポジウム開催にあたって

シンポジウム座長 岩渕 功一(早稲田大学教授)


 このおよそ20年の間に、国境を越えるテレビ文化の交流がたいへん盛んとなりました。それまでも、アメリカのテレビ番組は世界各地で見られていましたが、今ではそれ以外の国や地域で制作されたテレビ番組が国境を越えて日常的に視聴されています。東アジアにおいても、地域内のテレビ文化の交流がこれまで以上に活発となっています。日本の一部のテレビドラマなどは、既に70年代から他の東アジア地域で視聴されていましたが、現在ではその規模が比較できないほど大きくなっていますし、また、日本だけでなく、韓国、中国、台湾などで制作されたテレビ番組も国境を越えて視聴されるなど、多方向な交流が生まれています。

 放送文化基金の35周年記念シンポジウムでは、東アジア、特に日本、中国、韓国の間のテレビ文化の交流の過去・現在・未来について話し合います。今回の中心となるテーマは、視聴者=市民の間のテレビ文化をとおした「対話」です。テレビ番組がどのように行き交っており、どのような共同制作がされているのかといった交流の検証にとどまらず、それをとおしてどのような国境を越えた市民の間の対話的な関係が生まれているのかを考えてみたいと思います。

 もちろん、対話といっても、実際にその場所に行ったり、そこに住む人々と会って話しをしたりすることではありません。しかし、私たちは視聴者としてテレビ番組を楽しんでいるだけでなく、実は東アジアの市民として対話をしているのです。他の社会で制作されたテレビ番組の視聴をとおして、あるいはそれをきっかけとして、他の文化、社会、そしてそこに住まう人々について新たなイメージを持つようになったり、理解を深めたりした経験をお持ちの方は多いでしょう。さらには、何故自分は、他の文化、社会、人々についてこのようなイメージや偏見を知らぬうちに抱いてきたのだろう、何故日本ではそうしたイメージが広く持たれてしまっているのだろうと思われた方も少なくないはずです。あるいは、テレビ番組をとおして他の文化、社会、人々について知ることは、自分自身の生活や自らが属する社会のあり方に対して、少し距離をもってあらためて見つめ直すきっかけを私たちに与えてくれてもいます。テレビ文化の交流はこのような意識の変化を私たちの日常にもたらしています。他者のイメージを変えるだけでなく、自分や自らの社会や文化に対してもこれまでとは違う見方をもたらし、自己と他者との関係性について新たな意識を芽生えさせるという意味で、それはまさに「対話」であるといえるでしょう。

 本シンポジウムでは、こうしたテレビ文化をとおした市民の対話が日本・中国・韓国の間でどのように生まれているのか、そしてそれをさらに発展させるにはどうしたらいいのかについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。