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2016年2月9日

第一回 メディア・アクセシビリティとIPTVシンポジウム
「IPTVを使った字幕付与 Using IPTV for Captioning」

IPTVアクセシビリティコンソーシアム 設立委員(追手門学院大学 准教授)
福島 孝博

寄稿

 平成26年度の人文・社会文化の研究助成の助成事業として、第一回メディア・アクセシビリティとIPTVシンポジウムが開催されました。場所は、社団法人情報通信技術委員会(TTC)の2階の会議室にて行いました。
 このシンポジウムでは、IPTVアクセシビリティコンソーシアムが取り組んで来た、IPTVを使ったアクセシビリティに関する国際規格の策定についての報告がなされました。このH.702と呼ばれる国際規格は、国際電気通信連合(ITU-T)での検討と審査を経て、この程国際標準化規格として承認されたものです。
 国際規格と言われても、分かりにくいかと思いますが、国際電気通信連合は、国連の機関であり、国際的な規格を定めている組織です。規格の一例としては、電池です。電池は、国際標準規格が制定されており、それに従って各国が製品を生み出しているので、呼び方は各国で違っても、同じ電池が世界で使われていることになります。これは、一重に国際的な標準化規格があるためです。
 また、IPTVとは、馴染みのあまりない言葉かと思いますが、簡単に言うと、IP(インターネットの技術)とTV(テレビ)との融合するものだとお考え下さい。この技術を使うと、例えば、テレビの番組に、字幕が付いていない場合に、インターネットの側から字幕の情報を送り、それを重ねて見せることなどが、容易に出来るようになります。また、手話通訳者の映像を重ねて見せるといった事も同様に可能となります。
 IPTVアクセシビリティコンソーシアム(代表 早稲田大学亀山渉教授)では、この技術を使って、障がい者や高齢者を含む社会の幅広い人々に、アクセシビリティを高める、つまり情報をより得やすいものにするための活動をしています。
 では、この国際規格に沿ったIPTVを使った字幕付与に関することをお話しします。まず、字幕ですが、これは、言語の音声の情報を文字化するもので、聴覚障がい者、耳の不自由な人達にとっては、重要な情報源となります。講演会に行って講演を聞く場合、音声をその場で文字化すれば、耳の不自由な方でも、講演を楽しめます。また、テレビ番組においても、番組に登場する人々の音声が文字化されていれば、より多くの人が番組を楽しむことが出来ます。このような音声情報を文字化したものが字幕と呼ばれています。
 テレビ放送に関して言いますと、字幕は、字幕放送として実現されていますが、総務省の指針のもと、ここ数年で多くの番組に字幕が付与されるようになりました。新聞のテレビ番組欄にて「字」とか、「字」を四角く囲っている表示がある番組が字幕放送となります。アナログ放送からデジタル放送に移行し、デジタル放送を受信できるテレビ受像機には、基本的に字幕放送の字幕を表示する機能が備わっています。手元のテレビのリモコンのボタン操作で字幕を表示することが出来ます。テレビの字幕は、英語ではClosed caption (クローズドキャプション)と言われており、1980年にアメリカにて開発されたものです。普段は、クローズド、つまり、隠されているが、必要に応じて表示させることが出来るようにしたものです。この技術により、字幕が必要な人も必要でない人も、テレビ番組を見ることが出来ようになります。
 IPTVの利用が本格化すれば、テレビ番組に対して、テレビ放送の枠の中で対応していたものが、インターネット側からの字幕や手話の動画のデータを準備して重ねて映すことが可能となります。但し、実際にどこまで可能となるのかは、IPTVのシステム開発の状況や、著作権などテレビ番組に付帯する権利関係の問題などがあり、重ねて表示するための条件をクリアすることが必要となります。
 今回のIPTVの国際標準規格である、H.702においても、字幕についての規定がありますので、次に、それを手短に紹介します。字幕に関する規格は、字幕の性能に応じて以下ように3段階に分けて定められています。

・第一段階 Basic(基本)
・第二段階 Enhanced(拡張)
・第三段階 Main(メイン、本格)

 第一段階 Basic(基本)では、基本的な字幕の性能を定めています。字幕が表示されて、字幕文字の大きさ(サイズ)、文字の色、字幕の表示位置、字幕の背景の大きさや色が指定できます。字幕の背景とは、字幕が表示される場合に、その背景に、通常文字を取り囲むように長方形を映すもので、半透明にして表示されることが多いです。
 第二段階 Enhanced(拡張)では、Basicな性能に追加して、視聴者(ユーザー)は、字幕文字のスタイル(文字の種類)を変えることができ、複数の言語の字幕がサポートされている場合に、選択されている言語設定を維持することできます。
 第三段階 Main(メイン、本格)では、第一、第二段階の性能に加えて、字幕と動画の同期がスムーズにできるようになります。ここでの「同期」とは、字幕が動画、特に動画の音声に遅れることなく表示されることを言います。
 ここで紹介をした性能以外の事も可能で、規格では選択して追加可能なオプショナル性能として設定されています。

 IPTVの技術を使って、より多くの人々に役立つことが出来ればと思います。そのためには、今後、一部は開発されていますが、標準化規格に基づく実際のソフトウエアやそれを組み込んだ製品の開発がより進むことが望まれています。

注:3段階の性能について、基本、拡張、メイン(本格)としていますが、オリジナルの規格の言語は英語であり、これらは、個人的に訳出したものです。

関連URL
・ITU-T Recommendation H.702 (Accessibility profiles for IPTV systems)
 https://www.itu.int/rec/T-REC-H.702/en
・IPTVアクセシビリティコンソーシアム
 http://www.iptv-acc.jp/20151204.html

・人文社会・文化 助成
平成26年度「IPTVによるアクセシビリティ向上のためのシンポジウム開催」
IPTVアクセシビリティコンソーシアム 設立委員 福島 孝博(追手門学院大学 准教授)