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2015年2月6日

テレビ報道への接触が政党イメージや党首好感度に与える影響
メディア・投票行動研究会 代表(上智大学 教授)
渡邊 久哲

寄稿

 この研究では、選挙のときにテレビのニュースやワイドショーで放送される選挙報道が、視聴者(=有権者)の政党イメージや党首好感度にどのような影響を与えるかに焦点をあてました。選挙の投票日にむかってどの程度テレビ番組の中で扱われるかは政党や党首によって若干ちがいがあります、また視聴者の側でもそれらの報道をたくさん見る人とあまり見ない人がいます。そうした違いが、政党に対して抱くイメージや党首への好感度とどのように関係しているのかを、調査データを使って明らかにしようとしたのです。
 分析の対象にしたのは第23回参議院選挙です。2013年7月4日(木)に公示され、7月21日(日)が投票日でした。立候補者数は433人、改選議席数は121でした。前年12月の第46回衆議院選挙に自民党が大勝して、その流れのなかで選挙戦が始まり、やはり自民党が大勝した選挙でした。
 分析にあたって、まずテレビの主要報道番組への各政党と党首の露出量(番組の中で扱われた時間量:秒数単位)の推定をしました。推定にはエムデータ社が提供するテレビメタデータを使用しました。テレビメタデータとは、テレビで放送された内容をテキスト化してデータベースにしたものです。いつ、どの局で、どんな話題が、どのくらいの時間、どのように放送されたのか等について、100名ほどの専門スタッフが番組ごとに出演者、音声情報、テロップ情報などから判断して秒数単位で記録したものです。
 このデータを使って、投票日3か月前から投票日まで(2013年4月22日(月)~7月21日(日))の関東地区の地上波テレビ局のおもなニュース番組・ワイドショーについて、10の政党名および11の党首名(日本維新の会は、石原慎太郎と橋下徹の2人党首体制だった)をキーワードとしたテキストマッチングを行い、それぞれマッチした時間(秒単位)の合計値を各政党・党首のそれぞれの推定露出時間量(番組で扱われた時間)としました。
 対象にした番組は、「NHKニュース7」「ニュースウォッチ9」「報道ステーション」「朝ズバッ!」「とくダネ!」「ニュース23」「NEWS ZERO」「情報ライブミヤネ屋」など代表的なニュース番組やワイドショー28本です。
 同時に関東の有権者を対象にしたウェブ調査(=インターネット調査)をしました。実施したのは投票日まぢかの2013年7月16日(火)~17日(水)で、対象者はジャストシステム社の登録モニターの中から選びました。関東地方の20歳以上のモニターから、性別・年代・地点がかたよらないよう1119名を選んだのです。平均年齢49歳、最高齢83歳です。選挙の際に重視するメディア、政党イメージ、党首好感度、おもなニュース番組やワードショー番組の視聴習慣などを聞きました。
 この調査によって、対象者1119人のそれぞれが28番組のうちどれとどれをふだんから視聴しているかがわかります。そしてまたそれぞれの番組の中で各政党および党首が扱われた秒数はさきほどのテレビメタデータによる推定でわかっていますから、この2つの情報をつき合わせることによって1119人各人の政党および党首露出への接触時間(秒数)が推定できるのです。あくまで推定値ですが、これが本研究の一番ユニークな点です。
 つぎに1119人を接触時間の多寡にもとづいてグループ分けします。まずは自民党のテレビ露出に対する接触度が高い人たち、中くらいの人たち、接触度が低い人たちと3等分します。そして3グループごとに自民党に対するイメージの違いを見ます。他の9政党についても同様の分析をしました。

自民党のイメージ/TV露出接触度別

 すると、自民党、民主党、日本維新の会、みんなの党の4政党に関して、接触量とイメージの間には接触量の多い有権者ほどよいイメージ(「イメージよい」「まあよい」の割合)を抱く傾向が統計学的に顕著に認められました。この4党はいずれも比較的露出量そのものが大きい政党です。ただし、それらの政党も、悪いイメージ(「イメージよくない」「あまりよくない」の割合)に関しては接触時間量が多くても少なくても一定で変化がありませんでした。
 さらに党首の好感度(「好き」「好きでない」「わからない」)について同様の分析をしたところ、安倍、橋下、渡辺、石原の4党首は、接触量が大きい層ほど好感度(「好感を持っている」の割合)も高いのですが、やはり非好感度(「好感は持っていない」)は接触量が多寡と関係ありませんでした。
 よくお笑いタレントが出演番組本数を人気の目安にして、出演量(≒視聴者の接触量)が減ると生活が苦しくなるなどと自虐ネタを言いますが、テレビへの露出量と人気は深い関係があるようです。これは政治の世界にも共通するのかもしれません。ただし、政治報道の場合にもうひとつ重要なことがあります。それはよくないイメージや非好感度などネガティブ評価は露出量(=接触量)と無関係だということです。たくさんテレビに出れば、何となく好きだという人は増える可能性はありますが、嫌い(=賛同できない)という人を減らすことは難しいのではないでしょうか。
 これはあくまで1つの調査結果からの推定にすぎず、結論づけるのはまだ早いかもしれません。しかし今後、テレビの選挙報道を考えていく上で、ちょっと考えさせられる知見だと思います。

・人文社会・文化 助成
平成24年度「テレビの選挙報道が有権者の感情と投票意向に与える影響のメカニズムの研究」
メディア・投票行動研究会 代表 渡辺 久哲(上智大学 教授)