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アニメに見る日韓関係

 平成11年、12年度に助成援助した調査研究成果 が収録された本が今年5月末に刊行されました。『日本大衆文化と日韓関係〜韓国若者の日本イメージ〜』<朴順愛+土屋礼子(編著)三元社 2800円>です。 日韓共同ワールドカップを目前に出されたこの本は、“日本の大衆文化を韓国の若者はどう受け止めているのか、日韓両国民が描くお互いのイメージは、アニメ、マンガをはじめとする大衆文化からどのような影響を受け、また与えているのか”をテーマに、グローバル化時代の日韓交流の新たな形を探っています。
 前半の四章を韓国人研究者が、後半の三章を日本人研究者が分担執筆し、最後に、朴順愛氏を中心に行われた韓国の若者の意識調査の結果を加えた構成となっており、この共同調査の一部に放送文化基金が助成援助しました。その分析結果は特に第2章「日本大衆文化の流入現状と市場」(朴順愛)、第5章「韓国若者のマンガ・アニメ意識と日本アニメの韓国進出状況」(山下玲子)に生かされています。
2003年3月掲載

★追加情報★
朴順愛氏は平成15年3月1日から1年間、東京大学法学部の客員研究員として来日します。

平成11年度「韓国若者のテレビアニメ意識と対日イメージ形成の調査研究」
 →研究結果要旨
・平成12年度「韓国若者の日本アニメ意識と対日イメージ形成の変化」
(代表研究者 韓国 湖南大学校 助教授 朴順愛)

●研究結果要旨
「韓国若者のテレビ・アニメ意識と対日イメージ形成」 研究結果要旨   
朴順愛(湖南大学)
 本調査の目的は、従来の日本文化に対する韓国人の画一的な否定論から脱皮するために、韓国若者の日本テレビ・アニメに対する意識や日本のイメージを明らかにすることにある。
 1998年に日本大衆文化を解禁した韓国は、今後、日本大衆文化の多大な影響を受けるにちがいない。なかでも韓国の若者にとって日本大衆文化を象徴するのがマンガである。公式には禁止されていた日本のアニメーションを観て育った「アニメ世代」は、上は中年世代になっている。彼らの消費行動のなかに頻繁に登場する日本のキャラクターは、日本のイメージを好転させ、日本人への親近感を生み出していると考えられる。そこで、10代・20代を中心に40代までの若い世代を選び、調査した。小学生319人、中学生340人、高校生307人、大学生337人、社会人274人、計1577人であった。調査の結果 明らかになったことを、日本大衆文化およびアニメを中心に述べると以下の通りである。

1 日本大衆文化
 韓国若者が楽しむ大衆文化は、製作国別にみると、映画はアメリカ(65.8%)、マンガ(51.2%)およびアニメ(69.9%)は日本の作品であった。
 韓国若者は、日本大衆文化の解放に51.4%が賛成で、反対は13.9%にとどまった。解放に賛成する理由としては、「国際化に必要であるから」が三割弱と最も高く、「日本をより理解するために」と「面 白くて好きだから」が合わせて二割程度であった。
 日本大衆文化に接する頻度は、アニメ(81.8%)マンガ(76.9%)、ゲーム(71.0%)、音楽(49.0%)の順であった。主な情報入手ルートは、アニメはテレビ(51.0%)、マンガはマンガ本(42%)、ゲームはゲーム・センター(24.5%)とインターネット(23.8%)などで、従来の「人づてに」が大幅に減少した。
 日本大衆文化に接する理由としては、ほぼ半数の人々が「偶然に」接していた。面 白い傾向としては、「日本語の勉強のために」「日本文化を理解するために」が合わせて20%に近く、一年前の同様の調査より高くなっている。
 日本大衆文化に接した後は、「何も感じない」が半数近いが、「好感を持つようになった」22.3%、「日本を理解するのに役立った」15.2%と答え、「拒否感があった」は4.9%にとどまった。
 日本大衆文化の解放後、この調査の対象者が以前より変わった点として指摘するのは、「テレビなどで日本文化の紹介が多くなった」49.6%、「日本文化に接する場所が多くなった」46.2%、「日本キャラクター商品をより多く買うようになった」33.8%、「周囲の視線を意識しないで日本文化に接する」32.6%、「日本製品の購入が多くなった」26.1%、「日本がより好きになった」7.2%、「変化はない」21.7%と表れた。
2 アニメ
 アニメ視聴に関する調査では、具体的に63種のアニメの題名を提示して行ったが、そのうち48種が日本のアニメであった。その結果 、日本アニメ48種全部の平均視聴率は、六割程度であった。その中でも、銀河鉄道999、ドラゴンボール、クレヨンシンちゃん、セーラームーンなどが80%以上の視聴率であった。鉄腕アトム、名探偵コナン、スラムダンクなどは70%以上視聴していた。これらのアニメは全て韓国のテレビで放映されたものばかりである。すなわち、韓国人が日本アニメに接する主な媒体はテレビであることが確認できる。調査結果 からみても、接触媒体においてテレビが圧倒的に多く、70%近くの高い割合であった。インターネットなど通 信が一割強で、貸しビデオなどが一割弱で、ケーブルテレビが一割弱、衛星放送は1.2%とまだ低い。PC通 信やインターネットが若い世代の情報入手媒体として定着していることが言える。最近、インターネットにおけるアニメ・サイトが減少傾向を見せている。その理由は、著作権関係で掲載者の実名化が要求されるからであると推測される。
 視聴した人たちが最も面白いアニメとしてあげたのは、クレヨンシンちゃん、ポケットモンスター、スラムダンク、ドラゴンボール、名探偵コナンの順であった。これらのアニメは、スラムダンク以外は現在韓国のテレビで放映中のものばかりである。
 アニメ製作国は、視聴した人を対象にみると、九割が日本のアニメであることを認知していた、製作国の認知方法としては、半数以上が「登場キャラクターで分かる」と答え、若者にキャラクター効果 は大きい。「人物や背景の描写や内容の文化でわかる」「インターネットや友人から情報を入手する」「ストーリーでわかる」などを合わせると30%前後であった。また、「ペン・タッチでわかる」が15%程度、「専門雑誌を読んでわかる」が10%程度と、積極的に知ろうとするマニアの存在も窺える。一方、「テレビで放映時に表示してくれる」が二割程度であった。
 韓国アニメと日本アニメとの比較においては、日本アニメの方が韓国アニメより、「想像力が豊かだ」「幻想的だ」「主人公の行動がすてきだ」「ストーリーが面 白い」「素材が多様である(多様なジャンル)」「色彩が多様だ」「実感できる描写 である」「コミックである」といったすべての設問項目に対してそれぞれ70%以上がそうだと答え、圧倒的に日本アニメに肯定的評価をしていた。反面 、否定的評価としては、日本のアニメは「低俗だ」「扇情的だ」「誇張されてあり得ない内容だ」「暴力的だ」という回答があった。
 日本のアニメの影響を調べてみると、日本アニメを視聴した後に40%程度が「日本アニメの主人公に似た友人や恋人がいれば良いと思った」と答えた。次に「日本アニメでみたキャラクターの商品を購入した」「日本アニメをみて日本に行きたくなった」「日本アニメをみて日本語が習いたいと思った」「日本アニメに表現されている日本式感嘆詞、擬声語、造語などを使う」がそれぞれ30%近くあり、日本のアニメが韓国若者の対日本観形成に何らかの形で影響を及ぼしていることがわかる。さらに、「日本アニメをみて日本人が好きになった」と答えた人が10%以上もあり、日本のアニメを視聴することが日本観形成に直接的に影響を及ぼすものと言えよう。
 その他にも「日本アニメをみて日本アニメのマニア倶楽部に加入した」「日本アニメの主人公のヘアスタイルやファッションを真似する」「日本アニメの主人公の行動の真似する」「日本アニメの中の、完璧でなくどこか欠陥がある主人公に人間美を感じる」「日本のアニメをみてマンガ家になりたいと思った」などについて10%から20%の答えが出た。
 反面、「日本アニメに表現されている方法で暴力を使ったりイジメをする」が一割弱、「日本アニメをみて扇情的な感じをうけた」三割強、「日本アニメをみて性的な衝動を感じた」二割弱という答えがあり、従来既成世代が日本マンガやアニメが青少年に及ぼす悪影響に憂慮した面 も確かに存在していると言える。
 韓国若者が好きな国は、米国、イギリス、日本の順に多く、旅行したい国では、米国、日本、イギリスの順である。日本語に対する若者の関心は高い。日本語学習の動機では「日本の大衆文化を楽しむため」という新たな傾向も現れている。
 日韓関係改善の契機としてワールド・カップ共同開催に寄せる期待は大きい。天皇訪韓では賛成が反対を上回っているが、どちらでもない人が5割もあり、まだ迷いがみられる。全体的には、韓国の若者の間で日本に対するイメージは良い方向に変化しているといえる。 (2001年3月)