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プラズマテレビの絵作り
電気通信大学教授 御子柴 茂生

感性と絵作り
 最近脚光を浴びている大画面で薄型のプラズマテレビには、未だ低価格化、高発光効率化などの課題が残されている。さらにハイビジョン放送の特性を十分生かすため、単なる高画質を超えた「絵作り」も要求される。この絵作りとは被写体の明るさや色あいを正確に表現するに留まらず、いかに感性に訴える絵を作るか、ということも含んでいる。闇夜のカラスがはっきりと見えるようにしてほしい、子供の口元から頬にかけて健康そうな赤みを帯びさせてほしい、明るさの変化も強調してほしい、チャンバラで刀にキラリと反射する太陽の光を目が痛くなるほど眩しくしてほしい、等々。これらの要求を満たすためには、表示輝度の階調数を実効的に従来の16倍程度に増やすことが必要となる。
 「プラズマ」とは、気体原子が電離した状態を指す。この電離原子は、他の原子の電離を促す性質を有する。電離の成長が早ければ、放電も早く立ち上がる。この性質を利用することにより、プラズマテレビを構成する微小な放電の点灯速度を従来の数倍に高速化することができた。その結果、微弱な輝度を表現することが可能となり、表示階調ステップの最小値がピーク輝度の1/256であったのを1/4000にすることができた。これにより微妙な輝度や色あいの変化まで表現することができるようになった。

目の残像効果を利用

 さらに、動画に対してプラズマテレビの構造を変えることなく仮想的に画素数を増やし、解像度を高くする技術を開発した。人間の目の残像を利用する。暗闇で懐中電灯を大きく振り回すと、丸い光の輪ができる。懐中電灯を回しながら点滅すれば、点線の光の輪ができる。この点線の長さは、懐中電灯の点滅速度に反比例し、高速に点滅すれば点線も細かくなる。すなわち解像度が高くなる。この原理を利用してプラズマテレビの動画の解像度を上げる。ただし懐中電灯との違いは、テレビは動かないが、逆に目が動画を追従して画面上を動くことである。視点の動きに合わせてプラズマテレビの各画素の発光をコントロールすることにより、網膜上に高解像度で発光の刺激を与えることができる。
 プラズマテレビには赤、緑、あるいは青に発光する微小な画素が多数並んでいる。これら3原色の強度を調整することにより明暗や色調を再現する。しかしテレビをあまり近くから見ると、3つの色が融合しない。この仮想画素技術を用いれば、網膜上の同一の点で3つの色を認識することができるため、この問題も発生しない。このような技術により、ブラウン管を越える画質の実現に一歩近づいた。

2003年5月掲載

平成12年度助成
「ディジタル放送対応高画質プラズマディスプレイに関する研究」
(代表研究者 電気通信大学 教授 御子柴 茂生)